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TENTHOUSANDTHINGS

Making of
TENTHOUSANDTHINGS.

Making of<br />TENTHOUSANDTHINGS.

些細なきっかけから生まれる、美しいジュエリー。

些細なきっかけから生まれる、美しいジュエリー。

http://www.houyhnhnm.jp/mag/tenthousandthings/

「From one things begets the Ten Thousand Things(ひとつの物事から万物がうまれる)」

きっかけはどれだけ小さく些細なものでも、そこには大きな可能性が潜んでいる。古代中国の哲学者である、老子が唱えた言葉だ。

ニューヨークで生まれたジュエリーブランド〈テンサウザンドシングス〉は、多くの示唆に富んだこの老子の言葉を取って名づけられた。ふたりのデザイナーが紡ぎだす造形物は、まるで自然発生的に生まれたかのようにナチュラルで美しい。

些細なきっかけから生まれる、美しいジュエリー。

「有機的で美しいものを、ハンドメイドでつくる。これが我々の抱くコンセプトです。24年間、文字通り“自分たちの手”で、我々はジュエリーを作りつづけてきました。それは、マテリアルから生まれるものもあれば、概念から生まれるものもある。そういったひとつの“素材”がきっかけとなり、〈テンサウザンドシングス〉のアイテムはクリエイトされるのです」

そう教えてくれたのは、デザイナーのひとりであるデヴィッド・リース。彼はもともと、ニューヨークにある「リンダ・ドレスナー(Linda Dresner)」にてバイヤーを務めていた。そんな彼の元に、自作のジュエリーを持って見せにきたのが、〈テンサウザンドシングス〉のもうひとりのデザイナーであるロン・アンダーソンであった。ロンは当時からジュエリーデザイナーをしていた。

偶然とも必然とも思えるこの出会いがきっかけとなり、その後、多くのジュエリーが生みだされることとなる。

完成図は用意しない。アイテムが完成へと導いてくれる。

出会いからすぐに、ふたりは意気投合し、1991年に〈テンサウザンドシングス〉の活動をスタートさせる。ブランドが軌道に乗ったのはそれからすぐのことだった。彼らがリリースしたファーストコレクションが、ケイト・モスをモデルに起用した〈カルヴァン・クライン〉の広告にて使用され話題を呼ぶようになったのだ。それ以来、多くのセレブリティたちを魅了しつづけることに。人々に愛され、それをキープする秘訣とは? この問い掛けに、デヴィッドが答える。

「新しいアイデア、新しいマテリアル、新しいフォルム。いくつもの要素を組み合わせて、我々は常に新しいものを作るように心掛けています。24年間活動を続ける中で、これだけは変わっていませんね」

新しいものを作る、という言葉を、クールな表情で当たり前のように放つデヴィッド。シンプルで分かりやすい解答だが、実際の作業は言葉の軽さとは比例しないはず。24年間も活動を続けていれば、なおさらのことだ。どのようにすれば、そのようなクリエーションを続けることができるのだろうか?

完成図は用意しない。アイテムが完成へと導いてくれる。

「デザインをするとき、我々は完成図を頭に描きません」

ロンがゆったりとした口調で答える。その真意とは?

「制作をする中で、アイテムが終着点へと導いてくれる、とでもいいますか。作りながら、アイデアが生まれ、そのアイテムの色や形が決まっていくのです。彫刻家が『石の中に作品が眠っている』と話すことがあるでしょう? 我々が行っているのも、それと似たようなことです。そうして生まれたものは当然、オーガニックな美しさを持っている。それが我々の作るアイテムの、ひとつの特徴でもあります」

既存の手法に捕われない、アウトサイダーな姿勢。

従来の手法とは違ったアプローチで、唯一無二のクリエーションを行うデヴィッドとロン。彼らはどんなものから影響を受け、感性を養っているのだろうか?

「ビル・トレイラーや、ルイーズ・ブルジョワなどのアーティストに代表される、アウトサイダー・アートが好きです。ルイーズ・ブルジョワは、蜘蛛の彫刻で有名なアーティスト。六本木ヒルズの敷地の中に彼女の作品があるので、東京の方にも馴染み深いんじゃないかと思います」(ロン)

「あとは、ネイティブアメリカンがつくるアート作品も、興味深いものが多いですね」(デヴィッド)

既存の手法に捕われない、アウトサイダーな姿勢。

これらの作品に共通点はあるのだろうか?

「どれも『芸術はこうあるべき』というルールに捕われていない。そこにアウトサイダー・アートや、ネイティブ・アメリカンたちの作る芸術作品の真髄があります。彼らは既成概念を覆し、我々の頭のなかにある枠を大きく広げてくれる。私たちは、彼らのそういった姿勢にとても共感するんです。なぜならば、我々の活動もそこに通づるものがあるからです」

視線を真っすぐ我々へ向け、デヴィッドが語る。彼の言葉にある通り、完成図を用意しない〈テンサウザンドシングス〉のクリエーションは既存のフレームに収まることはない。アウトサイダーな姿勢、オルタナティブな思考。ここに彼らの創作の真髄を見つけることができた。

HOUYHNHNM magazine より